酩酊 五月雨 きみ 魚

「自称異常」な女と「自称正常」な女。

「あたしは、きみは、あなたは、世界は、存在する?」

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あたしにとってのきみ、は
本当に存在するのだろうか?

「していなければおかしい」
それは正答だと思う。
何故ならあたしがこの眼で視たから。



でも、視界は脳に支配、管理されている。
見えないものだって、
簡単に見えてしまう。
聴覚も、味覚だってそう。

幻覚を見たことがありますか?
幻聴を聞いたことがありますか?

あたしはある。

でもそれは「幻覚」「幻聴」だと理解できた。
でも、出来なかったら?


出来なかったから未だに
「幽霊」だの「都市伝説」だの「超能力」だのを信じる人がいるのだと、あたしは思っている。

つまり、現実と幻が区別出来ない可能性は確かにあって、しかも少なくもない。


夢を見ているときだって、夢を見ているときはそれがどんなに不自然だったとしても現実だと認識してしまうでしょう?

夢の中で
何度も起きては、ああ夢だったのか…
のループに陥った経験のある人も少なくないと思う。



じゃあこの世界が本物だと、
現実だと、
いま呼吸をしている自分が本物だと、
見えている現実が現実だと、
自信を持って言えるひとは居る?



あたしは、「たぶん」
いま、ここが現実だと思っていて、
「たぶん」きみも存在していると思う。

「たぶん」きみのことを
他の誰かも見えているし
「たぶん」あたしだって存在している。


多分、きっと、そうなんだと思う。



でも自分は何処にいても自分だ。
自分だけの世界にいようが、地球と呼ばれる世界にいようが、宇宙へ行こうが、死んでしまおうが、この意識がある限り自分は自分でしかない。

それに対し自分の周りは違う。
自分の脳の指令ひとつで、
在ることにも出来るし居ることにも出来るし
無いことにも出来るし居ないことにだって出来てしまう。


きみ、は、居るのか?

触れた手首は確かに在った。
触れることが出来た。
だからなんなんだ?

「人の感覚は脳の指令ひとつでどんな形にだって出来る」以上、そんな記憶だけで本当に居るのか否かなんて解らない。



もしかしたら此処も夢かもしれない。
もしかしたら現実なんて無いのかもしれない。
ああ、そっちの方が都合がいいな。
「本当」なんて無い。
「虚無」を彷徨い続けているだけ。
自分の脳内の中で。
あたしが造り上げた世界で。


…いや、それなら、もっと都合よくしてくれたっていいじゃないか。
夢をコントロール出来ないように、「脳内の現実」もコントロール出来ないのか?

自分の頭なのに!
自分の思い描いた世界にはならないって?
ヌルゲーが面白くないのは分かるけど、リセットボタンを押したくなるのはクソゲーっていうんだよ。

ねえ、あたしの頭よ。

此処は何処なの?
あたしは、あたしは、一体何なの?
何のために此処に居るの?
何のために「現実」だと認識させて其処で生かそうとしているの?

本当に、きみは居るの?
本当に、このお酒だと思っているものはお酒で、本当に、この煙草と思っているものは煙草なの?


解るはずもないよ。
生きている限り。
生きている事実を受け止めないと。
きっと死んでも、解らないけど。

解るはずもないのに、
答えを知りたがるのは
生きてるからなのかなあ。

生まれ変わることが出来るなら、あたしは魚になって、痛覚もないまま裁かれて死にたいよ。
それくらいは願ってもいいよね。


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